忘れないうちに、世の中との共同作業をきちんとまとめておくページ
2003年ぐらい以降の成果物を記録していきます
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中谷礼仁

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高みに上がらず地に墮ちず・役に立たない機械、スクラッチ・ザ・アーバンランド、クシシュトフ・ヴォディチコ


useless

12月5日 午後2時40分 早稲田の学部一年生向けの設計演習Aにて『笑いはどこから来るのか」という実験をおこなう。学生課題の「役に立たない機械」を5台用いる。

「…驚きと美と笑いは共通する性格を持っています。それは明確な目的の連関(因果律)からは決して生まれないということです。今回は5台の厳選された「役に立たない機械」を動かしてみて、それがどこから来るかを確認しましょう。」
やはり役に立たないものから笑いや驚きが起きる。それにしても大学の一年生がまだこんなに役立たずの物を作れることに驚く。

同日 午後6時より石川初氏、元永二朗氏を迎えて『スクラッチ・ザ・アーバンランド』の講演会。頭が柔らかいうちにGPSやら宇宙人的思考をすり込んでしまおうという企画。主催側が言うべきではないが大成功でした。お二方の見事なプレゼンテーションに対しての学生のノリがかなりいい。笑うべきところで笑い、くだらない質問を堂々と述べる。
元永氏の「風景スキャン」の新作(というか秘蔵作)が公開され、その偶然の人の形に場内騒然。元永氏はこれは「アート」ではない。「アートって今言ったらそれで終わってしまう」という言葉に状況への的確な判断があった。歴史工学家としてその「エンジニア」ぶりに最大の共感。
石川初氏はこれまでのネタを惜しみなく公開しつつ、福沢諭吉ヴァージョンに対抗する新作「大隈重信は何を見ているかヴァージョン」を発表。これまた場内にため息が洩れる。石川氏はいろいろな位相をトランスフォームさせることの天才だけれど、その基準に大地(いや、正確に言うと大地の波形)がある。建築学科の思考過程の最終到達点のひとつとしての「コミュニティ」さえ、その波形の反映なのだ。講演が終わったら三人ぐらいの学生がGPSの購入先を聞きにきた。いいよいいよ!学生。

12月6日 午後6時半 少し遅れて講演会『クシシュトフ・ヴォディチコ』at芸大に赴く。場内立ち見。建築物への投影プロジェクトでは政治的あるいは人権的コンテクストを扱いながらもそれを飛び越えて驚きが笑いに、悲しみが喜びに転化する。ユーモアがそのジャンプを助けている。素直にいいと思う。ディス・アーマー(反武装器)という「役に立たない機械」を装着した彼女が流す涙が美しい。
初期のスモール・デバイスによるマイノリティーのためのコミュニケーションの道具造りと、この10年ぐらいの建物へのイメージの投影による意味の転用プロジェクトという彼の作品の系譜は、両者がなんとも断絶している感じがしていたのだけれど、ちゃんと応えていた。要はラテン語源つながりで、face→surface→facadeで建物にもジャンプしたとのこと。このアナロジーの機敏さは尊敬に値する。見えない因果律とでも言おうか。
質問では、それをもとのコンテクストに戻して語ろうとする意見が相次いだので、つい頭の後から押されてそうではないと質問してしまう。驚きや美や笑いの瞬間を「正しい」コンテクストに戻そうとする方々は地○に堕ちよ(というか堕ちているが)と言いたい。ふと見ると早稲田の学生が結構たくさん。チラシ配ったから来たみたい。いいよいいよ。

この三つの体験を通して体得したことは、高みに上らず、地に墮ちずということだ。それを支えるのがユーモアというエーテルなのだろう。
5日の講演会では、石川さん、元永さん、そして後援の日本生活学会に感謝します。あーおもしろかった。

- 2007年12月07日 - 戻る -
注目の告知
●鹿島出版会から拙著『セヴェラルネス 事物連鎖と人間』が公刊されました。表紙装丁を、岡崎乾二郎さんにご担当いただきました。綺麗です。ぜひ公刊の際はお手に取っていただければ。序文は田中純先生です。

セヴェラルネス


「批評の真髄はどこにあるのか。歴史と理論を踏まえつつ、徹底的に現状を分析すること、必要とあれば時空や知の領域を自由に行来しながら、広い意味でのコンテクストを明らかにしてみせること、そこにこそ批評の意義は求められるべきであろう。建築の分野でそのことをわたしたちに教えてくれたのは、そのあまりにも早い死が惜しまれる「ヴェネツィア派」の論客、マンフレード・タフーリであった。そして、中谷礼仁の本書が幸運にもまた、あらためてそのことをわたしたちに気づかせてくれた。
岡田温司未來社『未来』2006年7月号

注意深く、丹念に書かれた文章ながら、なんかこう、新鮮で生き生きとして見えるのは、おそらく著者自身の「驚き」を伴っているからだろう。また、本書全体に通底している、著者の「連鎖する事物」への(中略)畏敬の念には心を打たれる。自覚的に何かを作ることを志しているつもりの、私たちの多くに欠落しているのは、すでにある事物へのこうした態度なのだった。」
石川初TENPLUSONE WEBSITE

「現在の建築論や都市論には関係者の当を得た解説が少なくないが、どうしてもここから先は当事者や専門家にまかせざるを得ない、という部分が残る。これらの書物は、たとえ子供向けに書かれたものでも、それゆえに難解なのだ。「強い」専門性の石を砕く「弱い」実際的思考に貫かれた本書は、だから分かりやすくなによりもおもしろい。
植田実雑誌『文学界』2006年7月号

「本書は、事物—つねに痕跡でしかない事物—に向かい合ったとき、言葉でなにをなしうるかを改めて教えてくれる書物でもある。本書と前後して邦訳が刊行されたエイドリアン・フォーティーの『言葉と建築—語彙体系としてのモダニズム』はちょうどこの、建築について語るということはなにをしていることになるのかという古くてつねに新しい問題を扱っているが、中谷氏の書物はまさにその問いに対するいくつかの回答を示したものである。」
山本貴光作品メモランダム

未來社『未来』2006年7月号に岡田温司さんによる共感あふれる書評をいただきました。(20060703)
TENPLUSONE WEBSITEにランドスケープ・デザイナー石川初さんによる書評が掲載されました。深い読みを自分の体験にも照らし合わせて書いていただきました。 (20060627)
雑誌『文学界』2006年7月号に植田実さんによる書評が掲載されました。次第次第に社会に理解されていただいているようでうれしいです。 (20060608)
作品メモランダムの山本貴光さんに的確かつ連鎖的な評をいただきました。 (20060216)

また口絵にはセヴェラルネスの思想を端的にかつ寓意的に語る歴史的な豪華写真群を掲載しています。60年代の幻の写真同人誌 『PROVOKE』 に掲載された高梨豊さんによる”あの写真”も、収録しました。高梨さんご本人によって注意深く選定された新プリントを大変な好意で借用させていただきました。ぜひご覧ください。




連載中
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●ワンダリング・セブンティーズ(新建築社『住宅特集』)→途中で終わり

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戦後建築史学の射程と現代建築史研究会研究の早急なる必要性
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